相続放棄をした場合の固定資産税の支払い

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2023年09月22日

1 相続放棄とは

 相続放棄とは、被相続人(=亡くなった人)の財産を一切相続しないという意思表示を、家庭裁判所に対して行うことをいいます。

 ここでいう被相続人の財産には、預貯金などのプラスの財産のみならず、借金や税金の滞納などのマイナスの財産も含まれます。

 相続放棄の手続きは、法律上、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に行わなければならず、その期日を過ぎた場合には、原則として財産を相続したものとして扱われてしまいます。

 したがって、例えば、被相続人に借金や税金の滞納等があった場合には、その支払義務を負わないように、相続放棄の手続きをとった方がよいことになります。

 また、遠方に住んでいたり、関係性が疎遠だった被相続人が亡くなったが、その所有していた不動産を相続して管理することが困難である、というような場合にも、相続放棄をするか検討した方がよいかと思います。

2 相続放棄をした場合の固定資産税の支払い

 被相続人との関係性が疎遠で亡くなったことを知らなかった(あるいは、そもそも被相続人との親族関係すら知らなかった)が、役所から被相続人の所有していた不動産の固定資産税の支払いを求める書類が届き、そこで初めて、被相続人が亡くなったことを知ったというケースもあり得ます。

 そのような場合、固定資産税の支払いに応じなければならないのでしょうか。

 

⑴ 相続放棄すれば固定資産税も支払わなくてよい

 役所からの書面で初めて被相続人が亡くなったことを知ったという場合には、その通知が届いてから3か月以内に相続放棄の手続きをとれば、被相続人が所有していた不動産を相続しなかったことになります。

 したがって、その不動産にかかる固定資産税の支払い義務を負うこともありません。

 

⑵ 例外的な場合

 固定資産税は、基本的には1月1日の時点で課税台帳に登録されている者が、その支払い義務を負うことになっています。

 したがって、例えば12月1日に相続人が亡くなったが、相続放棄の手続きが完了したのが翌年の1月31日であった場合、1月1日の時点で課税台帳に登録されていたことで固定資産税の支払い義務を負うことになってしまうのです。

 相続放棄をすると、相続開始時(つまり、被相続人が亡くなった時)から遡って、相続しなかったことになるという効果がありますが、固定資産税との関係では、1月1日の時点で課税台帳に登録されている以上、支払い義務を負わされてしまう可能性があるのです。

 なお、相続放棄をしたにもかかわらず固定資産税の支払義務を負ってしまった場合、支払った固定資産税は、相続をした相続人がいればそちらに、相続人全員が相続放棄をした場合には、相続財産管理人に請求することが可能です(もっとも、相続財産管理人を選任するには多額の費用がかかるため、回収は現実的には困難と言わざるを得ません。)。

3 相続放棄のご相談は弁護士法人心まで

 このように、被相続人が不動産を持っていた場合、時期によっては相続放棄をしたにもかかわらず固定資産税の支払い義務を負う可能性があります。

 相続放棄をしたいという方は、お早めに弁護士法人心までお問い合わせください。

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